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さて、今回でこのコラムもおしまいです。
最後を飾るのはリアル系格闘アクション+伝説の力がなんとも絶妙なアクションシーンを生み出している『黒神 The Animation』です。

   受けの美学が良質のアクションを生み出す
   『黒神』のリアルなアクションの秘密


 ドッペルゲンガー。自分に瓜二つの存在で、死期の近い者がこれを見るという不吉な存在です。かの夏目漱石もドッペルゲンガーに悩まされたといいます。ドッペルゲンガーとは別に世界には自分とそっくりの人間がふたりはいるといわれています。つまりは同じ姿形の人間は世界には3人はいるわけです。ドッペルゲンガーを見ると死ぬという世界で、もしもそっくりな3人が出会ったら、果たしてどういう事態が起こるでしょうか?

 世界は共存均衡によって成立していて、そっくりな3人が出会えば、バランスを保つために、3人のうちの2人は何らかの形で世界から排除されます。こうして残ったひとりが全てを受け継ぐルートとなります。これが本作『黒神 The Animation』の根幹を成すドッペルライナーの設定です。
 主人公、慶太の契約者であるクロが、世界の均衡を保つために存在する元神霊(もとつみたま)であるとか、ルートではない者ーーサブと呼ばれますがーーが、契約者となると命を削られてしまうなどなど、本作の設定もなかなかに面白いのですが、今回はそのお話ではなく、アクションシーンについて語ろうと思います。

 すでにご覧になっている方ならご存知だと思いますが、本作は非常にリアルな描写が心がけられています。監督を務めているのが『十二国記』『英國戀物語エマ』の小林常夫監督。リアルな美術を多用して、作品の空気感を紡いでいく手法は、小林監督の得意とするところで、第1話の海にほど近い下町の風情や、慶太の心情とリンクする水没都市の背景美術などは目を見張るものがあります。加えて『エマ』では執拗なくらいに描かれた生活描写が、本作でもリアルな世界観を生み出すのに貢献しています。

 それは本作のメインディッシュであるアクションシーンでも発揮されています。OPアニメの1シーン1カットで次々と敵をなぎたおすクロの勇姿は、リアルな重量感を伴う動きと、デフォルメされたアニメならではのアクションが見事な融合をみせていて、これだけでもぐぐっと拳を握るほど興奮してしまうわけです。

 本編でも作画泣かせなレイアウトでクロのアクションを見せてくれます。特に監督自ら絵コンテも担当した第1話は群を抜いています。

 屋台のラーメン屋でクロがドッペルライナーについて語り始めるシーンで、これを遮るように金属バットがクロの左側頭部にめりこんでいく。衝撃で首を持っていかれたクロの短いカットを挟んで、駐車場のアスファルトに叩き付けられてごろごろと転がるクロの姿が描かれています。その衝撃による体重移動のリアルさは見事としか言いようがありません。

 反撃に転じたクロが敵を粉砕するまでのレイアウト、カメラワークは劇場映画クラスです。左奥から右方向へ駆け込んでくるクロが拳をかためて、相手との間合いを計るバストショットから、拳を繰り出し戦う二人を中心にカメラがぐるりとまわり始め、戦う二人を中心にリアルな背景も旋回していきます。

 ファイターとしてのクロは小柄な軽量級なわけで、相手にダメージを与えるには素早い動きでより多くの拳を繰り出すと同時に、渾身の一撃を相手に確実にヒットさせなくてはなりません。クロが敵のバランスを崩した後の、怒濤の攻撃は、たまらなくイカしています。

 時代劇やアクション映画の殺陣でも、技の受け手の技量によって、画面の説得力が変わってくるとよく言われますが、それはアニメの場合でも同じようです。『黒神』では打撃を受けた場合に、どのようなリアクションをとるのか、考え抜かれた演出と作画が、リアルな戦闘アクションを構築していきます。

 物語は自身がサブであると知った慶太の決意、クロの出自が明らかになるなど折り返し地点へ向けて、徐々に盛り上がりを見せております。今後、クロがどのような相手と戦いをくりひろげるのか楽しみであります。肉弾相打つアクションに興味を持たれた方はぜひ『黒神The Animation』をご覧下さい!

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